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脊髄・脊柱疾患

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私たち脳神経外科領域で担当する、脊髄・脊柱疾患には次のようなものがあります。

T.脊髄腫瘍

脊髄腫瘍発生した場所により、大きく3つのグループに分類されます。

1) 脊髄髄内腫瘍

 脊髄実質内に発生する腫瘍で、神経膠腫・上衣腫・血管芽腫などがあります。発生した部位により臨床症状は異なりますが、ゆっくり進行する頚部・背部・腰部の疼痛、上肢・下肢の運動麻痺や知覚障害、膀胱・直腸障害などが認められます。脊髄内に空洞を形成し、空洞による症状を認めることもあります。悪性度の低い腫瘍では手術的に全摘出することができますが、悪性度の高い腫瘍では化学療法など追加療法が必要となることがあります。

    2)脊髄硬膜内髄外腫瘍

 脊髄実質の外側で、脊髄を包んでいる硬膜の内側に発生します。脊髄神経から発生する神経鞘腫と、脊柱管硬膜から発生する髄膜腫が大部分を占め、ともに良性腫瘍であるため手術的に摘出することにより根治可能です。臨床症状は頚部・背部・腰部の疼痛に加え,腫瘍の発生部位に一致した感覚障害・運動障害や膀胱・直腸障害を認めます。髄内腫瘍に比べ、症状に左右差を認めることが多いようです。

3) 脊髄硬膜外腫瘍

 硬膜外腫瘍の多くは、肺癌・乳癌・前立腺癌などからの転移性腫瘍によって占められています。悪性腫瘍では症状の進行は比較的急速で、椎体の圧迫骨折による局所の激痛とそれに伴う両下肢の対麻痺を来すことも少なくありません。転移性腫瘍に対しては、早期に脊髄の減圧を行います。特に脊椎の圧迫骨折は緊急手術の適応となります。

U.脊髄動静脈奇形

 動静脈奇形は血管の発生段階における先天的異常により、毛細血管を経ずに動静脈が吻合したもので、間にナイダスと呼ばれる血管塊を形成するものと、動脈から静脈に直接血液が流入する動静脈瘻を形成するものがある。

 出血や脊髄の虚血症状により、上下肢の疼痛や運動障害・感覚障害の原因となる。脊髄血管撮影によりいくつかのタイプに分類され、レントゲン透視下にナイダスを選択的に詰めてしまう「超選択的塞栓術」、または手術的摘出術が行われる。

V.頚部脊椎症・椎間板ヘルニア

 椎間板ヘルニアとは、椎間板が脊柱管内に脱出し脊髄や脊髄神経を圧迫している状態を指す。一般には突出した椎間板だけではなく、椎体の変性により形成された骨棘により脊髄が圧迫を受けることも多く、頚部脊椎症と総称されている。純粋な椎間板ヘルニアは40歳代に多いが、椎体の退行変性に伴う頚椎症は50歳代に好発する。症状は圧迫されて脊髄神経の支配領域の筋力低下や疼痛などの神経根症状と、障害レベル以下の感覚障害や歩行障害などの脊髄症状に分けられる。まずは頚部カラー装着や安静臥床など保存的療法が試みられるが、保存的療法でも症状が改善しない場合は手術が行われる。

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